4月の過日、弊所弁護士らは三斗小屋温泉の双璧の一つ煙草屋旅館に宿泊して参りました。三斗小屋温泉は康治元年である1142年に発見された那須七湯の一つです。登山口から最短ルートでも2時間掛かるこの宿には満天の星を見上げることが出来る野天風呂が待っています。当日は春の佳境に差し掛かっているというのに万年雪にご挨拶され、毎年遭難者が出るという道なき道が弊所弁護士らを苦しめました。福島県との県境にある那須岳は栃木県唯一の活火山であり、山頂到達時には我々以外の人影はありません。重心をずらす突風が死の香りすら漂わせ、色即是空宛ら噴火即死の危険を負担しながら所々の木枝に巻かれた赤布と誰かの足跡のみを頼りにするところ2時間半。一行は小屋とは名ばかりの立派な旅館の群れを拝むことに成ります。野天風呂は想像を絶する混浴で、或る未婚弁護士の心を躍らせ、或る既婚弁護士の記憶に木の実ナナを蘇らせ間違っても殺人事件が起きないようにと祈らせることになりました。江戸時代には会津藩への宿場として賑わいを見せ、平成の初頭には若き徳仁親王と雅子皇后も立ち寄ったと言われる三斗小屋での夜は9時の消灯ともに終焉を迎えます。翌朝の食事は朝の6時から、太鼓の音とともに若鮎を食べ、山小屋珈琲を飲んで秘湯に永遠のフェアウェルを告げました。浸かりすぎると硫黄にあたって死ぬと言われる那須湯元で復路の汗を流し春の旅行は終了、再び依頼者のために汗を流す日々が始まりました。